外在化の二重性と部品組立型再構成学習の理論化
外在化の二重性と部品組立型再構成学習の理論化
1.序論
構成主義的学習観における「構成」は,学習者が外部から与えられた情報をそのまま受け取るのではなく,自らの既有知識や経験に基づいて意味を構成するという学習原理を指す。この立場は,有意味学習や概念マップ研究においても重視されてきた(Ausubel, 1968; Novak & Cañas, 2008)。しかし,この「構成」は,しばしば「学習者がゼロからすべてを生成すること」と同一視されることがある。その結果,あらかじめ部品を与え,それらを学習者に組み立てさせる課題に対して,「部品を与えることで学習者自身の構成が妨げられるのではないか」「生成させることこそが重要ではないか」「組み立ては単なる選択課題であり,簡単すぎるのではないか」という疑問が生じる。概念マップは概念と概念間の関係を表す外的表象として位置づけられており,このような構造的表象を用いた学習を考えるうえで重要な基盤となる(Novak & Cañas, 2008)。
本稿の目的は,この疑問に対して,構成主義的学習原理と具体的な学習方法とを区別しながら,部品を用いた再構成を学習として理論的に位置づけることである。本稿では,あらかじめ与えられた部品を学習者が解釈し,関係づけ,意味ある構造として組み立てることを通して理解を形成する学習を,部品組立型再構成学習と呼ぶ。以下では,文脈上明らかな場合には,これを単に再構成学習と略記する。
本稿で理論化しようとする部品組立型再構成学習は,平嶋らによるKit-Build概念マップ研究と密接に関係する。Kit-Build概念マップでは,教授者が作成した目標マップから部品を生成し,学習者がそれらを用いて概念マップを再構成する方式が提案されている。この方法は,自由に概念やリンクを生成する活動ではなく,与えられた部品をどのように関係づけるかを学習者に求める点で,本稿がいう部品生成の支援と構造選択への焦点化を具体化した先行研究として位置づけられる(Yamasaki et al., 2010; Hirashima, 2019)。
本稿の中心的主張は,部品組立型再構成学習は,学習者の構成活動を弱めるものではなく,部品生成の負荷を支援・統制したうえで,部品と構造の意味的差分を埋める構造選択へと構成活動を焦点化する学習である,という点にある。この主張を明確にするために,本稿では,課題として観察可能な「生成」を,内的理解そのものの直接的生成ではなく,理解を語句,部品,命題,図,概念マップなどの外的表現として表す過程,すなわち外在化として捉える。そのうえで,外在化には,既有理解を外的に表す側面と,外在化を通して内的理解を生成・進行させる側面があることを示す。本稿では,この性質を外在化の二重性と呼ぶ。外的表象は,情報を外に置くだけでなく,認知活動の構成や課題遂行に関わるものとして論じられてきた(Zhang & Norman, 1994; Ainsworth, 2006)。
以下では,まず外在化の二重性を整理し,次に生成課題の意義と限界を検討する。そのうえで,部品組立型再構成学習を,生成課題とは異なる構成活動の焦点化として位置づける。最後に,この学習が適した学習目的と,発展的設計の可能性を論じる。
2.外在化の二重性
本稿で問題にする「生成」は,学習者の内的理解そのものが直接的に生成される過程ではなく,学習者が自らの理解を語句,部品,命題,図,概念マップなどの外的表現として表す過程を指す。すなわち,課題として観察可能な生成は,基本的には理解の外在化として捉えることができる。
ただし,外在化は,単に内的に完成された理解を外に写し出すだけの過程ではない。学習者が外的表現を作成する際には,既有知識,経験,直観,断片的理解,概念候補などをもとに,何を部品として切り出すかを判断し,それらをどのように関係づけるかを検討する必要がある。したがって,外在化は,内的理解を外に表す過程であると同時に,外に表そうとすることを通して内的理解を明確化し,更新していく過程でもある。
本稿では,この性質を外在化の二重性と呼ぶ。すなわち,外在化には,第一に,既にある内的理解を外的表現として表す側面があり,第二に,外的表現を構成する過程を通して内的理解を生成・進行させる側面がある。
2.1 既有内的理解の外在化
外在化の第一の側面は,学習者がすでに有している内的理解を,外的に操作可能な形として表すことである。たとえば,概念マップを作成する場合,学習者は自分が知っている概念,関連すると考える語句,説明可能な関係,直観的に重要だと感じる要素などを選び出し,ノードやリンクとして表現する。概念マップは,概念とそれらの関係を視覚的・命題的に表す道具として説明されている(Novak & Cañas, 2008)。
この観点に立つと,自由生成型の課題であっても,学習者が完全に無から部品を作り出しているわけではない。外的には白紙の状態から表現が作られているように見えるため,「ゼロからの生成」と捉えられやすい。しかし,認知的には,学習者は既有知識や経験の中から,部品となりうる意味資源を探索し,選択し,外的表現として分節化していると考えられる。
したがって,自由生成型の外在化における生成は,無からの創出というよりも,内的資源の選択・分節化・関係づけによって成立する生成である。言い換えれば,それは単なる選択ではないが,完全な無からの生成でもない。むしろ,内的に潜在していた意味資源を選択し,部品として成立させるという意味で,生成的な性質をもつ選択である。
2.2 外在化を通した内的理解の生成・進行
外在化の第二の側面は,外に表そうとする過程そのものを通して,内的理解が生成・進行することである。学習者は,自分の理解を語句や図として表そうとするとき,自分が何を理解しており,何を十分に理解していないのかに気づく。また,ある概念を部品として切り出したり,他の部品と関係づけたりする中で,その概念の意味や位置づけを再検討することになる。
この意味で,外在化は,既にある理解の単なる表出ではない。むしろ,外的表現を構成することによって,曖昧だった理解が分節化され,関係が明確化され,内的理解そのものが進行する。学習者の理解は,外在化に先立って完全に成立しているのではなく,外在化しようとする活動の中で形成・更新される場合がある。
ここで重要なのは,部品生成と構造化が相互作用的かつ循環的であるという点である。どのような部品を切り出すべきかは,どのような構造を構成しようとしているかに依存する。一方で,どのような部品が切り出されるかは,構成可能な構造を制約する。したがって,部品が先に完全に決まり,その後に構造が作られるわけでも,構造が先に完全に決まり,その後に部品が選ばれるわけでもない。部品生成と構造化は,互いに影響し合いながら進行する。
この循環性は,学習途中の学習者にとって大きな困難となる。対象領域の構造をすでに理解している熟達者であれば,その構造を表すために必要な部品を比較的適切に選択・生成できる。しかし,学習者は,まさにその構造をまだ十分に理解していない。したがって,構造を理解するためには適切な部品が必要であるにもかかわらず,適切な部品を生成するためには構造の見通しが必要である,という循環的困難が生じる。
3.生成課題の二重性と学習設計上の課題
以上の議論から,生成課題にも二重性があると考えられる。生成課題は,一方では,学習者が既に持っている理解を外的表現として表す課題である。学習者は,自分の既有知識や断片的理解をもとに,部品を選び,表現し,関係づける。この側面では,生成課題は既有内的理解の外在化として機能する。
しかし,生成課題は,他方では,外在化を通して内的理解を生成・進行させる課題でもある。学習者は,表現を作成する過程で,自分の理解の曖昧さに気づき,部品の意味を明確化し,関係を探索し,全体構造を調整する。この側面では,生成課題は,単なる表出課題ではなく,理解を構成・更新する課題である。
したがって,生成課題の価値は,学習者に自由に表現を作らせること自体にだけあるのではない。むしろ,生成課題の本質は,外在化を通して,既有理解の表出と内的理解の生成・進行を同時に生じさせる点にある。
ただし,生成課題では,部品生成と構造化が同時に要求されるため,学習者にとっての認知的負荷は高くなりうる。特に,複数の要素を相互に関係づけながら処理する場合,認知負荷理論における要素間相互作用性の観点から,課題の複雑性は高まりうる(Sweller et al., 2011)。
さらに,生成課題には,学習機会の公平性や学習の質を担保するうえでの課題もある。自由生成型の課題では,部品生成と構造化を自力で行える学習者は豊かな外在化を行える一方で,それが困難な学習者は,何を部品として切り出すべきか,どのように関係づけるべきかを十分に判断できず,活動そのものが停滞する可能性がある。つまり,生成課題は,「できる学習者はできる」が,「できない学習者は課題への参加そのものが難しくなる」という性質を内在させやすい。
また,生成課題では,学習者が外在化できた範囲だけが学習対象として現れやすい。そのため,学習者によって扱われる部品の範囲,関係づけの水準,全体構造の複雑さが大きく異なりうる。これは,学習者の個別性や自由な理解状態を把握するうえでは有用である。しかし,特定の構造的理解を全員に形成させたい場合には,学習機会や到達すべき構造の質を一定程度そろえることを難しくする。
形成的評価の観点からも,生成課題には診断とフィードバックの困難がある。形成的評価やフィードバックは,学習者が自分の状態を把握し,学習行動を調整するうえで重要である(Nicol & Macfarlane-Dick, 2006)。しかし,生成物が学習者ごとに大きく異なる場合,つまずきが,部品生成の不足によるものなのか,部品の意味理解の不足によるものなのか,関係づけの誤りによるものなのか,全体構造の見通しの不足によるものなのかを切り分けにくい。
この点から見ると,生成課題と部品組立型再構成学習は,優劣ではなく,学習目的に応じて異なる役割をもつ。生成課題は,学習者が自発的に何を部品として切り出し,どのような構造を構成しようとするかを把握するうえで有効である。一方,部品組立型再構成学習は,部品生成の負荷を支援・統制することで,学習者全員が共通の部品を対象に関係判断と構造選択に取り組めるようにし,構造的理解の形成,診断,フィードバックを設計しやすくする。
4.部品組立型再構成学習
部品組立型再構成学習とは,あらかじめ与えられた部品を学習者が解釈し,それらを関係づけ,意味ある構造として組み立てることを通して理解を形成する学習である。ここでいう部品とは,概念,語句,命題の構成要素,リンク,図的要素など,外的表現を構成するために用いられる要素を指す。
部品組立型再構成学習の代表例として,Kit-Build概念マップがある。Kit-Build概念マップでは,教授者が作成した目標マップを分解して部品を生成し,学習者はその部品を用いて概念マップを再構成する。この方法では,学習者は概念やリンクを自由に生成するのではなく,提供された部品の意味を解釈し,それらをどのように関係づけるかを判断する。したがって,Kit-Build概念マップは,部品生成の負荷を支援し,構造選択を学習対象化する方法として捉えられる(Yamasaki et al., 2010; Hirashima, 2019)。
学習者は,それらの部品を単に確認するのではなく,それぞれの意味を理解し,どの部品をどの部品と関係づけるか,どのような関係として接続するか,全体としてどのような構造を構成するかを判断する。したがって,部品が与えられているとしても,学習者の構成活動が不要になるわけではない。
この学習は,部品があらかじめ与えられているため,一見すると選択課題のように見える。しかし,ここでの選択は,提示された候補の中から適切な個別要素を選ぶだけの選択ではない。本稿では,提示された候補の中から適切な個別要素を選ぶ課題を要素選択課題と呼び,複数の要素をどのように関係づけ,どのような全体構造を構成するかを判断する課題を構造選択課題と呼ぶ。
この区別に基づけば,部品組立型再構成学習は,単なる要素選択課題ではない。そこで求められる中心的活動は,個々の部品を選ぶことではなく,部品間の関係を判断し,全体として意味ある構造を構成することである。したがって,部品組立型再構成学習は,要素生成を支援したうえで構造選択を求める学習として位置づけられる。
構造選択では,一つ一つの判断が互いに独立しているわけではない。ある部品と別の部品を関係づける判断は,他の部品との関係や,全体構造の整合性に影響する。そのため,構造選択は,相互依存的な組合せ的選択となる。可能な組み合わせは,部品数,リンク数,方向,接続可能性,全体配置などの選択肢が組み合わさることで急速に増大する。したがって,学習者がすべての組み合わせを全探索することは現実的ではない。
さらに,組み立ては,部品を所定の位置に配置するだけの操作ではない。個々の部品は,単独では局所的な意味しかもたない。部品が全体構造の中でどのような役割を果たすか,どの部品とどのような関係を結ぶことで意味をもつかは,組み立ての過程で学習者が解釈しなければならない。したがって,組み立てとは,部品として与えられた意味と,全体構造として成立する意味との間にある意味的差分を埋める行為である。
この意味的差分を埋める過程において,学習者は,部品の意味を再解釈し,関係の妥当性を判断し,全体構造との整合性を検討する。したがって,部品組立型再構成学習は,部品提供によって意味がすべて与えられる学習ではなく,部品と構造の間にある意味的ギャップを学習者が構成的に埋める学習である。
また,共通の部品集合を対象にすることは,形成的評価やフィードバックの設計にも意義をもつ。Kit-Build概念マップでは,学習者マップと教授者マップが同じ部品集合を用いて構成されるため,両者の差分を構造レベルで比較しやすい。この性質は,学習者がどの部品間の関係をどのように誤って解釈したのか,どの構造を構成できなかったのかを診断する基盤となる(Hirashima, 2019)。
なお,部品組立型再構成学習の考え方は,概念マップに限られない。たとえば,モンサクンでは,学習者が与えられた単文カードを選択し,適切な順序に並べることで算数文章題を作成する。ここでも,学習者は文を完全に自由生成するのではなく,与えられた部品を組み合わせ,問題構造を構成することを求められる。さらに,システムは構成結果を診断し,フィードバックを返す。この点で,モンサクンは,部品を用いた構造構成と形成的フィードバックを組み合わせた学習環境として,部品組立型再構成学習の近接事例とみなすことができる(Hirashima et al., 2007; Yamamoto et al., 2013)。
5.生成課題と部品組立型再構成学習の比較
生成課題と部品組立型再構成学習の違いは,構成的か非構成的かの違いではない。両者はいずれも,学習者が意味を構成する活動を含んでいる。ただし,両者では,外在化過程のどの部分を学習者に担わせるかが異なる。
生成課題では,学習者は,何を部品として切り出すかという部品生成と,それらをどのように関係づけるかという構造化の双方を担う。これに対して,部品組立型再構成学習では,部品生成の負荷が教授者やシステムによって一定程度支援・統制される。その分,学習者の活動は,部品の意味解釈,部品間の関係判断,全体構造の再構成に焦点化される。Kit-Build概念マップにおいて,教授者が用意した目標マップを部品化し,学習者がそれを組み立てるという設計は,まさに分節化と構造化を分け,構造化に学習活動を焦点化する具体例として捉えられる(Yamasaki et al., 2010)。
また,部品組立型再構成学習は,学習機会の公平性と学習の質を担保するうえでも意味をもつ。生成課題では,学習者が自力で外在化できる範囲に応じて,取り組める部品や構造の水準が大きく異なりうる。これに対して,部品組立型再構成学習では,共通の部品集合を与えることで,学習者全員が少なくとも同一の構成要素を対象に関係判断と構造選択に取り組むことができる。これにより,学習者間の自由度を完全に均一化するわけではないが,構造的理解を形成するための共通の学習機会を設計しやすくなる。
ここで重要なのは,部品が与えられるからといって,内的理解の生成が不要になるわけではないという点である。学習者は,与えられた部品の意味を自分の既有理解と照合し,必要に応じて新たに解釈し,他の部品との関係の中で位置づけなければならない。特に,提示された部品が学習者の現在の理解を越えている場合,学習者は,自力ではまだ外在化できなかった概念や関係を受け取り,それらを意味ある構造として組み立てることを求められる。この場合,部品組立型再構成学習は,単なる簡略化された学習ではなく,外的に与えられた部品を契機として,内的理解を生成・進行させる学習となる。
形成的評価の観点からも,両者の違いは重要である。生成課題では,生成物の多様性が高いため,つまずきの原因を診断し,学習者ごとに適切なフィードバックを返すことが難しい場合がある。これに対して,部品組立型再構成学習では,部品集合が共通化されているため,学習者の構成結果の差分を,部品の解釈,関係判断,方向づけ,全体構造との整合性といった観点から分析しやすい。そのため,再構成学習は,構造的理解の形成だけでなく,形成的評価とフィードバックの設計にも適した方法となりうる。
以上より,部品を与えることは,学習者の構成活動を奪うことではない。むしろ,部品生成と構造化の循環的困難を調整し,関係構造の構成に学習活動を焦点化する教育的設計として位置づけられる。生成課題が,部品生成と構造化の双方を学習者に委ねる課題であるのに対して,部品組立型再構成学習は,部品生成を支援したうえで,構造選択を学習者に求める学習である。
したがって,「部品を与えると構成が妨げられる」という見方は,構成という学習原理と,自由生成という一つの方法を混同している可能性がある。構成的学習において重要なのは,学習者が何もないところからすべてを生成することではなく,意味資源を解釈し,選択し,分節化し,関係づけ,構造として理解することである。外在化の二重性に基づけば,部品組立型再構成学習は,生成を否定するものではなく,生成として一括されがちな外在化過程を分節化し,さらに要素選択ではなく構造選択を学習対象として明確化する方法である。
6.部品組立型再構成学習に適した学習目的
部品組立型再構成学習は,すべての学習目的に対して万能な方法ではない。その意義は,学習者に何を生成させたいのか,何を外在化させたいのか,何を理解させたいのかによって変わる。したがって,この学習の意義を明確にするためには,どのような学習目的に適しており,どのような目的には制約をもつのかを整理する必要がある。
6.1 構造的理解の達成
部品組立型再構成学習が特に適しているのは,何らかの構造的理解の達成を目的とする学習である。ここでいう構造的理解とは,個々の知識要素を知っていることではなく,複数の要素がどのように関係し,全体としてどのような意味ある構造を構成しているかを理解することである。
たとえば,概念間の関係,因果関係,手続きの流れ,数量関係,論理構造,問題解決過程,説明構造などを理解する場合,学習者は個々の要素を知るだけでは不十分である。各要素がどのように関係し,ある要素が全体構造の中でどのような役割を果たしているかを理解する必要がある。
部品組立型再構成学習では,部品生成の負荷を一定程度支援したうえで,学習者に関係判断と構造選択を求める。そのため,学習者は,部品を単独で記憶するのではなく,部品同士の関係や,全体構造の中での位置づけを考えることになる。この点で,部品組立型再構成学習は,構造的理解を学習対象として明確化する方法である。
6.2 学習機会の保障と形成的評価
部品組立型再構成学習は,構造的理解を目的とする学習において,学習機会の保障と形成的評価の設計に適している。生成課題では,学習者が自力でどの部品を生成できるかによって,学習活動の出発点や到達しうる構造が大きく異なりうる。これに対して,部品組立型再構成学習では,共通の部品集合を与えることで,学習者全員が同じ構成要素を対象に関係づけと構造選択に取り組むことができる。
このことは,学習の自由度を制約する一方で,構造的理解に必要な部品を学習者全員に提示し,共通の学習課題として構造化の活動に参加させることを可能にする。したがって,部品組立型再構成学習は,学習者の自由な外在化を観察する方法というよりも,特定の構造的理解に向けて学習機会を整える方法として位置づけられる。
また,部品が共通化されていることにより,学習者の構成結果を比較しやすくなる。たとえば,ある部品をどのように解釈したか,どの部品と関係づけたか,どの関係を誤ったか,どの部分で全体構造との不整合が生じたかを分析しやすい。したがって,部品組立型再構成学習は,学習者のつまずきを診断し,形成的フィードバックを返すための基盤を提供する。
さらに,このフィードバックは学習者に対してのみ向けられるものではない。多くの学習者が同じ部品の意味解釈や同じ関係判断でつまずく場合,それは学習者の理解不足だけでなく,部品の切り出し方,リンクの設定,説明の不足,あるいは基準構造そのものの明確性に問題がある可能性を示唆する。したがって,再構成結果は,教授者側の教材設計・部品設計・構造設計を見直すためのフィードバックとしても機能する。
この点で,部品組立型再構成学習は,学習者への形成的評価と,教授者側への教授設計評価を同時に可能にする方法として位置づけられる。
6.3 学習者理解の診断における制約
一方で,部品組立型再構成学習は,学習者自身の自由な理解状態を診断する目的には一定の制約をもつ。部品があらかじめ与えられるということは,学習者の外在化が一定方向に導かれることを意味する。そのため,学習者が自発的にどの概念を想起するか,どのような部品を自力で生成するか,どのような独自の観点から対象を切り出すかを把握するには,必ずしも最適ではない。
生成課題では,学習者が何を部品として切り出すかそのものが,学習者の理解状態を反映する可能性がある。これに対して,部品組立型再構成学習では,部品の候補があらかじめ提示されるため,学習者の理解は,主として「与えられた部品をどのように解釈し,関係づけるか」に現れる。
したがって,部品組立型再構成学習は,学習者がどのような要素を自発的に生成できるかを調べる方法というよりも,提示された要素間の関係をどのように理解し,構造化できるかを調べる方法である。この性質を踏まえるなら,部品組立型再構成学習は,学習者の自由な理解の広がりを診断する目的よりも,特定の構造的理解に対する到達度や,構造内での関係理解を把握する目的に適している。
6.4 学習目的に応じた生成課題との使い分け
以上のように,部品組立型再構成学習は,構造的理解を形成し,その達成状況を診断し,形成的フィードバックを返す目的に適している。一方で,学習者が自力でどの部品を生成できるか,どのような観点から対象を切り出すか,どのような独自の理解や問題意識をもっているかを把握するには,自由生成型課題の方が適している場合がある。
したがって,部品組立型再構成学習と生成課題は,どちらが優れているかという関係ではなく,学習目的に応じて使い分けられるべき関係にある。構造的理解を共通に形成させたい場合,あるいは形成的評価とフィードバックを設計したい場合には,部品組立型再構成学習が有効である。一方,学習者の自由な発想,独自の切り出し,個別的な理解状態を把握したい場合には,生成課題が有効である。
このように考えると,部品を与えることは,学習者の構成活動を奪うことではなく,特定の学習目的に応じて構成活動の焦点を調整する設計である。部品組立型再構成学習は,構造的理解の形成を目的とする場合に,学習者の活動を関係判断と構造選択に焦点化する方法として位置づけられる。
7.部品組立型再構成学習の発展的設計
部品組立型再構成学習は,基準構造を再構成させる課題としてだけではなく,代替構造の生成,創造的拡張,認知的負荷の動的調整,リフレクション支援,生成AI時代の共創モデルへと拡張可能である。これらは,本稿の中心課題である部品組立型再構成学習の理論的位置づけから導かれる発展的論点である。
本章では,部品組立型再構成学習を固定的な課題形式としてではなく,学習目的や学習者の熟達度に応じて拡張・調整可能な学習設計として捉える。
7.1 基準構造から代替構造へ:創造的拡張への接続
部品組立型再構成学習には,基準構造への到達を目的とする場合と,基準構造を参照点としながら代替構造の生成を目的とする場合がある。前者では,教授者が意図した構造,すなわち基準構造を学習者がどの程度再構成できるかが中心となる。この場合,再構成は,対象領域において共有されるべき関係構造を理解し,部品と構造の意味的差分を埋める活動として位置づけられる。
一方で,基準構造は常に唯一の正解として扱われる必要はない。学習者が基準構造をいったん再構成した後で,部品の追加,削除,変更,関係の再設定,別構造の提案を行うことも可能である。この場合,基準構造は,学習者の創造的活動を制限するものではなく,代替構造を検討するための参照点として機能する。
重要なのは,代替構造の生成を,基準構造を無視した自由な発想としてではなく,基準構造を理解したうえでの拡張・批判・再解釈として位置づけることである。学習者は,まず基準構造を再構成することによって,対象領域における標準的な関係構造や教授者の意図を把握する。そのうえで,その構造では表しきれない意味,別の関係づけの可能性,追加すべき部品,異なる構造化の可能性を検討することができる。
このように,基準構造を経由した代替構造の生成は,学習的にも制御可能である。学習者は完全に自由な外在化から始めるのではなく,共有された構造的基盤をいったん再構成したうえで,その基盤との差分として自分の解釈やモデルを提示することができる。この差分は,単なる誤りではなく,学習者の理解,問題意識,別解可能性,創造的再解釈を検討するための対象となる。
したがって,部品組立型再構成学習は,基準構造への到達を目的とする再構成だけでなく,基準構造を足場とした代替構造の生成へも拡張可能である。この拡張により,再構成学習は,構造的理解の形成と,モデル構築的・創造的な学習活動を接続する方法として位置づけられる。
7.2 制約の明示化と創造的活動への展開
部品組立型再構成学習は,部品をあらかじめ提示するため,創造性を損なうのではないかという疑問が生じうる。しかし,創造性は,新しい部品を生成することにのみ現れるものではない。与えられた部品をどのように関係づけるか,部品をどのような構造の中に位置づけるか,既存の部品にどのような意味を見いだすかにも,創造的な活動は含まれる。
この意味で,部品組立型再構成学習は,部品生成の自由度を制約する一方で,関係づけ,再配置,構造化における創造性を促す学習として位置づけることができる。創造性研究においても,制約は必ずしも創造性を阻害するものではなく,創造的探索の方向づけとして捉えられることがある(Stokes, 2005; Sawyer, 2012)。
さらに,部品および構造的制約を与えることは,創造性を単に制限するものではなく,創造的活動の前提となる制約を明示化する働きをもつ。学習者は,与えられた部品と構造的枠組みの中で関係づけを検討する過程を通して,その制約の内側で可能な構造だけでなく,制約の限界にも気づきやすくなる。たとえば,提示された部品だけでは十分に表せない意味,別の部品を追加すれば表現できる関係,既存の構造とは異なる構成可能性などが意識化される場合がある。
したがって,部品組立型再構成学習は,創造性を閉じるものではない。むしろ,部品と構造的制約を明示化したうえで,その制約を再検討・拡張する後続活動へ開く学習として位置づけられる。再構成後に,部品の追加・変更を認めたり,他者との議論や比較を行ったりすることで,制約を越える創造的活動へ展開しうる。
7.3 認知的負荷の動的調整とスキャフォールディング
部品組立型再構成学習は,自由生成型課題と対立する方法ではなく,自由生成へ至るための段階的な足場かけとして位置づけることもできる。学習初期の学習者にとって,部品生成と構造化を同時に求められることは大きな認知的負荷となる。特に,対象領域の構造をまだ十分に理解していない段階では,どの部品を切り出すべきかを判断すること自体が困難である。
この段階では,部品をあらかじめ提供し,学習者の活動を部品の意味解釈,関係判断,構造選択に焦点化することが有効である。これにより,学習者は,部品生成の困難に過度に妨げられることなく,構造的理解の形成に取り組むことができる。
一方で,学習者の理解が進み,構造の見通しが形成されるにつれて,支援のあり方を変化させることができる。たとえば,一部の部品を隠す,リンクを生成させる,余分な部品を含めて選択させる,部品を追加させる,あるいは最終的に自由に構造を外在化させるといった形で,部品提供の程度を段階的に減らすことができる。
このように,部品組立型再構成学習は,固定的な課題形式ではなく,学習者の熟達度に応じて認知的負荷を動的に調整するスキャフォールディングとして設計できる。初期段階では部品提供によって構造選択に焦点化し,理解の進展に応じて部品生成の比重を高めていくことで,再構成学習は自由生成型の外在化へと接続される。学習者への支援を調整し,徐々に減らしていくという考え方は,スキャフォールディングの古典的議論とも整合する(Wood et al., 1976)。
この観点に立つと,部品組立型再構成学習は,生成課題の代替物ではなく,生成課題へ至るための準備段階,あるいは生成課題と往還する学習設計として位置づけられる。すなわち,部品提供から自由生成への移行は,構成活動の制限ではなく,構成活動の焦点を学習者の状態に応じて調整する過程である。
7.4 リフレクション支援への展開
部品組立型再構成学習は,メタ認知・レビュー・リフレクションの支援にも接続しうる。部品が与えられているため,学習者は,自分が各部品をどのように解釈し,なぜその関係づけを選んだのか,またその構造が全体として整合しているのかをモニタリングしやすい。自己調整学習では,学習者が自らの学習過程をモニタリングし,評価し,調整することが重視される(Zimmerman, 2002)。
生成課題では,部品生成と構造化が同時に行われるため,学習者自身にとっても,どこでつまずいたのかを把握しにくい場合がある。これに対して,部品組立型再構成学習では,部品が共通化されているため,学習者は自分の構造化判断を対象化しやすい。特に,フィードバック,他者との比較,基準構造との差分表示などを組み合わせることで,学習者は自分の理解のずれや不足を検討できる。
この意味で,部品組立型再構成学習は,構造的理解を形成するだけでなく,自分の構造化判断をレビューし,必要に応じて修正するリフレクションの契機となりうる。再構成結果は,単なる正誤判定の対象ではなく,学習者が自分の理解を見直すための外的表象として機能する。
7.5 生成AI時代の共創モデルへの接続
部品組立型再構成学習は,生成AI時代における共創的学習モデルにも接続しうる。生成AIは,語句,説明,概念候補,命題候補などの部品を生成することができる。しかし,それらの部品がどのような意味をもち,どのような関係構造として理解されるべきかは,学習者自身が解釈し,再構成する必要がある。
この意味で,AIが部品生成を担い,人間が構造選択と意味的差分の解消を担うという共創モデルは,部品組立型再構成学習の理論的延長として位置づけられる。AIが提示する説明や候補は,そのまま理解になるわけではない。学習者は,それらを自分の既有知識と照合し,必要に応じて修正・追加しながら,意味ある構造として再構成する必要がある。
したがって,生成AI時代において重要なのは,AIが生成した出力を受け取ることではなく,その出力を部品として扱い,人間が構造選択と意味的差分の解消を行うことである。この点で,部品組立型再構成学習は,AIによる生成と人間による意味構成を分担するための理論的基盤となりうる。
ただし,この点は本稿の中心課題ではなく,今後の発展的検討課題として位置づけられる。部品組立型再構成学習の理論は,生成AI時代における学習設計を考えるうえで有効な示唆を与えるが,AIが生成する部品の質,学習者による解釈可能性,誤情報や過剰な流暢性への対応などは,別途検討される必要がある。
結語
本稿では,課題としての生成を外在化として捉え,その外在化には,既有内的理解の外在化と,外在化を通した内的理解の生成・進行という二重性があることを整理した。この観点に立つと,部品を与える部品組立型再構成学習は,構成を否定する方法ではなく,外在化過程のうち部品生成の負荷を支援・統制し,関係判断と構造選択に学習活動を焦点化する方法として位置づけられる。
部品組立型再構成学習は,単なる要素選択ではない。学習者は,部品間の関係,方向,全体構造との整合性を判断する必要があり,その活動は相互依存的な構造選択として成立する。さらに,再構成は,部品として与えられた意味と,全体構造として成立する意味との間にある意味的差分を埋める行為である。この意味で,部品組立型再構成学習は,部品が与えられているにもかかわらず,意味理解に基づく構成活動を強く要求する。
生成課題は,学習者の自由な外在化を促し,個別の理解状態を把握するうえで重要な方法である。しかし,部品生成と構造化を同時に求めるため,学習者間の遂行差が大きくなりやすく,学習機会の公平性,学習の質保証,形成的評価・フィードバック設計には課題をもつ。これに対して,部品組立型再構成学習は,共通の部品を与えることで,学習者全員が構造選択に取り組むための基盤を整え,つまずきの診断やフィードバックを設計しやすくする。
また,部品組立型再構成学習は,Kit-Build概念マップやモンサクンに見られるように,部品を用いた構造構成と診断・フィードバックを結びつける学習支援研究と接続する。これらの研究は,部品生成を支援しつつ構造化を学習対象化するという本稿の理論的整理を具体化する先行研究として位置づけられる(Yamasaki et al., 2010; Hirashima, 2019; Yamamoto et al., 2013)。
以上より,部品を与えることは,構成主義的学習原理と矛盾するものではない。むしろ,部品組立型再構成学習は,生成として一括されがちな外在化過程を分節化し,部品生成ではなく構造選択に構成活動を焦点化する学習である。この学習は,部品と構造の意味的差分を埋めることを通して,構造的理解の形成を支援するとともに,形成的評価,教授設計の改善,創造的拡張,および自由生成への段階的移行を可能にする教育的設計として理論化できる。
参考文献
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