生成AIの成果物に「何があって,何がないのか」:四つの機序と意味点検としての自己再構成

 生成AIの「成果物」に何があって,何がないのか?

生成AIには計算的機序,機能的機序はあるが,意味的機序が不十分である.根拠提示ではその代替は十分にできない.したがって,人の役割は,意味的機序の部分を担う意味構成である.

本稿では,生成AIが生成する成果物(質問応答,説明文,要約,解法手順,設計案など)をめぐる議論が混線しやすい点を整理するために,生成AIのふるまいを支える「機序」を四つに区別する.第一に計算的機序とは,入力から出力が得られるまでにモデルがどのような演算を行っているか,すなわち部品(層・注意・重み)と手順(計算グラフ)に基づく生成過程の透明性である.第二に機能的機序とは,なぜそれらしい応答が得られるのかを,入出力の法則性として説明する水準であり,プロンプトやコンテクストの与え方によって応答が体系的に変化すること(例示に倣う,制約に従う等)を含む.これら二つの水準では,生成AIの「生成の仕方」および「条件に応じたふるまい」を相当程度語ることができる.

一方で第三の意味的機序は別の問いに関わる.意味的機序とは,出力が「正しいと言える条件」—根拠の真正性,推論の妥当性,適用範囲の限定,例外・反例への耐性,矛盾検出と修正—がどこでどのように担保されるかという妥当性保証の過程である.生成AIは流暢で整合的な成果物を生成できるが,少なくともLLM単体では,これらの妥当性保証が常に内部過程として組み込まれているとは限らず,意味的機序の内在化は弱いと言える(=妥当性保証が外部化されやすい).このため,成果物の完成度や整い具合が,そのまま理解や妥当性を保証するとは限らない.

第四の根拠的機序は,出力に対して説明・根拠・参照をどのように提示するかに関わる.生成AIは「理由」や「根拠らしい説明文」を生成できるが,その説明が実際の内部因果過程に忠実である保証(faithfulness)が強いとは限らない.また,根拠が提示されたとしても,それが検証可能な参照(どの資料のどこか)として固定され,第三者が照合できる形になっていなければ,根拠提示は意味的機序(妥当性保証)の代替にはならない.したがって,根拠提示は意味的機序を補助し得るが,それだけで妥当性保証が成立するわけではない,という区別が重要となる.

以上を踏まえると,生成AIが得意とするのは「成果物の生成(計算・機能)」であり,教育的に中心に据えるべきは,成果物を妥当化し,必要に応じて修正する「意味構成(意味点検)」であることが見えてくる.ここで意味点検とは,外在化された各命題(概念間関係)について,(i) 根拠の所在を確認し,(ii) 例外・反例条件を検討し,(iii) 適用範囲を限定し,(iv) 不整合があれば関係づけを修正する一連の過程を指す.生成AI時代においては,この意味点検を学習者が担うように課題を設計し,成果物中心の評価を相対化する必要がある.

この意味点検を具体的な学習活動として実装する方法の一つが,自己再構成(再構成法)である.再構成法では,学習者(あるいは生成AI)が生成した説明を概念マップとして外在化し,それを部品化したうえで,学習者に再統合させる.自己再構成が意味点検として機能する機序は,主に次の三点に整理できる.第一に,部品からの再統合は「どの概念間にどの関係を成立させるか」を再決定させ,曖昧なリンク語に隠れた飛躍や誤接続を命題単位で露呈させる.第二に,部品の過不足や行き詰まりは欠落・混同・過剰一般化の手がかりとなり,ズレを起点とした自己モニタリングと修正を促す.第三に,部品化された表現への表現変換を伴う再統合は,命題の適用条件や関係の射程を捉え直す契機となり,点検対象を「関係が成り立つ理由」へと移す.ただし再構成は,設計によっては形だけを一致させる“適合的パズル”になり得るため,差分の同定,根拠の明示,反例・例外条件の検討,適用範囲の限定を併置して,点検が確実に生起する課題構造として整える必要がある.

このように,本稿の立場は,生成AIの成果物生成能力(計算的・機能的機序)を前提としつつ,妥当性保証(意味的機序)を学習者側で外部化し,意味点検として担わせるところに教育的な中核を置くものである.

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