自己再構成を通した意味点検の機序:作った概念マップを再構成すると,意味点検タスクとなる
自己再構成を通した意味点検の機序
概念マップの作成は,学習者が内的に形成した理解を概念とリンクのネットワークとして外在化する活動であり,概念の選択や関係づけを通して意味構成を促す点で学習に資する.しかし,成果物としてマップが完成したこと自体は,各命題(概念間関係)の妥当性が点検され,理解が確かめられたことを必ずしも保証しない.外在化された各命題について,根拠と適用条件(例外を含む)を点検し,必要に応じて関係づけを修正できる状態であることが意味理解として望ましいといえる.ところが作成過程では,リンク語の曖昧化・一般語化によって関係の飛躍が覆い隠されたり,記述・配置の負荷が大きい場合には関係の妥当性点検よりも「とりあえず形にする」ことが優先されたりすることがある.また,学習者が自身の解釈枠組みに沿って構成すると,欠落や矛盾があっても自己一貫的にまとまり,理解の不十分さが顕在化しにくい.これらは,成果物の生成過程に関するものとなり,したがって成果物の完成度を理解の代理指標として用いることは必ずしも適当ではないことを示唆する.したがって,外在化された構造を対象として,妥当性点検を確実に作動させる追加の課題構造が必要となる.
そこで本論では,学習者が自ら作成した概念マップを部品から自己再構成する活動を導入し,それを意味点検を起動する装置として位置づける.ここで重要なのは,自己再構成を「同じものをもう一度作る」復元作業とみなすのではなく,外在化された命題関係を,別形式・制約下で再統合させることによって,命題の成立条件を点検させる活動として設計する点である.自己再構成が意味点検として機能する機序は,次の三点に整理できる. 第一に,自己再構成は概念・リンク部品を用いて命題を組み直すため,各接続において「どの概念間にどの関係を成立させるか」を再決定せざるを得ない.この再決定は,作成段階で曖昧なリンク語や自己解釈により包摂されていた飛躍や誤接続を,命題単位の選択として露呈させる.すなわち,外在化された構造が,自己再構成によって「点検可能な命題集合」として再提示され,関係の妥当性点検が要求される.第二に,再構成では部品の過不足や接続の行き詰まりが生じやすく,それ自体が欠落・混同・過剰一般化の手がかりとなる.学習者は,余りや不足,あるいは複数候補間での迷いといったズレを起点に自己モニタリングを行い,根拠の再確認や関係の再検討へと向かう.第三に,部品化された表現は学習者が作成時に用いた表現とは異なる形で提示されるため,学習者は自分の理解をそのまま再現するのではなく,部品表現に合わせて再符号化し,再統合する必要がある.この表現変換を伴う再統合は,理解を固定化したままの再生ではなく,命題の適用条件や関係の射程を捉え直す契機となり,点検の対象を「関係が成り立つ理由」へと移す.
以上の三点を通じて,自己再構成は,外在化された構造に対して,根拠・例外条件・適用範囲の検討と修正を促す意味点検の機序として機能する. ただし,自己再構成は設計によっては,学習者が意味の点検を経ずに形だけを一致させる“適合的パズル”になり得る.したがって本稿では,自己再構成を単なる復元作業にとどめず,(a)差分の同定(どの命題が欠落/誤接続/過剰一般化か),(b)根拠の明示(どの記述・定義・データに依拠するか),(c)反例・例外条件の検討,(d)適用範囲の限定を併置することで,点検が確実に生起する課題構造として整える.このとき,自己再構成過程で生成される差分修正の履歴や根拠参照の明示は,最終成果物の完成度だけでは捉えにくい意味理解の成立過程を観察可能にし,説明の“もっともらしさ”と妥当性保証とを区別した評価へ接続しうる.
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