量の同定に基づく演算の決定

 本研究では,文章題における演算の決定を,表層的な言語表現に基づいて直接行うものではなく,状況に含まれる量の同定と,それらが構成する量構造の把握を介して行うものとして捉える。ここで量の同定とは,各数値表現について,何を対象とする量であるか,どの単位で表されるか,単独に成立する存在量であるか,他の量との関係によって成立する関係量であるかを識別することである。特に関係量の同定は,その関係量を構成する二つの量の同定を伴う。すなわち,関係量は単独に与えられる量ではなく,二つの量の間の対応関係として成立する量であるため,その同定とは,表現上の形式を認識することではなく,何と何の関係であるかを定めることを意味する。比例場面では,二つの存在量とそれらを結ぶ関係量が同定されることによって,まず当該状況が乗除構造として把握される。その上で,どの量が未知量として求められ,どの量が既知量として与えられているかに応じて,具体的な計算手続きとして乗法または除法のいずれを用いるかが定まる。したがって,演算は「ずつ」などの表層的な言語的手がかりから直接選択されるのではなく,量の同定と量構造の把握を介して導かれるものと位置づけられる。この意味で,量の同定に基づく演算の決定は,言語的な言い回しに依存した方法に比べて,表現の揺れや誤誘導に対して相対的に頑健であると考えられる。なお,同様の観点は,加減場面において「増えた量」や「違いの量」のような関係量を想定する場合にも適用可能であり,さらに反比例,初期値付き比例,合成存在量を含むより複雑な量構造へと拡張しうる。

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