第4章20260312
4. 関係量の理論
前章では,算数文章題の数量構造を,二つの存在量と一つの関係量からなる三量構造として記述できることを示した。本章では,この三量構造における関係量の性質を整理し,算数文章題に現れる関係量の体系を示す。
4.1 関係量の基本的性質
関係量は,二つの存在量の関係によって定義される量である。すなわち,存在量 と が与えられるとき,関係量 は
として定義される。
算数文章題において重要な点は,同じ存在量対から複数の関係量が定義される場合があることである。例えば,二つの存在量 と に対しては,
-
合併
-
差
という二つの関係量が定義される。
同様に,比例関係では,
-
比率
-
逆比
という二つの関係量が定義される。
このように,算数文章題に現れる関係量は,単一の関係としてではなく,存在量対に対して定義される関係量の集合として理解することができる。
4.2 対応関係量
対応関係量は,同時に成立する二つの存在量の関係として定義される関係量である。代表的な対応関係量としては,
-
合併
-
差
-
比率
-
逆比
が挙げられる。
4.2.1 合併と差
加減構造においては,二つの存在量 と から
によって合併が定義される。また,
によって差が定義される。
これらは同一の存在量対から定義される二つの関係量であり,図式的には図7のように表される。
図7 合併と差の二重三角構造
合併
/ \
A B
\ /
差
4.2.2 比率と逆比
乗除構造においては,二つの存在量 と から
によって比率が定義される。また,
によって逆比が定義される。
これらも同一の存在量対から定義される二つの関係量であり,図式的には図8のように表される。
図8 比率と逆比の二重三角構造
A/B
/ \
A B
\ /
B/A
このように,対応関係量では,同じ存在量対から二つの関係量が定義される構造が現れる。この構造が,本研究でいう二重三角構造である。
4.3 変化関係量
対応関係量とは異なり,変化関係量は時間的に異なる二つの状態を表す存在量の関係として定義される。
例えば,
-
変化前の量
-
変化後の量
が与えられるとき,変化量は
として定義される。
ここで重要なのは,増加と減少は独立した関係量ではないという点である。すなわち,
-
正の変化量 → 増加
-
負の変化量 → 減少
として理解することができる。
そのため,変化関係量では対応関係量のように二つの独立した関係量を定義することができない。このため,変化構造は図9のような単三角構造として表される。
図9 変化構造
変化量
/ \
変化前 変化後
4.4 加減構造と乗除構造における関係量
以上の整理から,算数文章題に現れる関係量は次のように整理できる。
加減構造
-
合併
-
差
-
変化量
乗除構造
-
比率
-
逆比
ここで重要なのは,加減構造と乗除構造が異なる体系として扱われてきた一方で,いずれの構造においても関係量は
二つの存在量の関係として定義される
という共通の性質を持つことである。
4.5 関係量体系としての整理
以上をまとめると,本研究における関係量の体系は図10のように整理できる。
関係量
├ 対応関係量
│ ├ 合併
│ ├ 差
│ ├ 比率
│ └ 逆比
│
└ 変化関係量
└ 変化量
対応関係量では二重三角構造が現れ,変化関係量では単三角構造が現れる。この整理により,算数文章題に現れる数量関係を,関係量の種類に基づいて体系的に理解することができる。
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