ヴィトゲンシュタインの命題

 理解内容を外的表象化する方法の一つとして,三つ組による表現を位置づけることができる。三つ組がこのような表象方法として成立するのは,それが対象や関係のあり方,すなわち事態を表しうる構造として解釈できるからである。この点で,三つ組による表現は,命題を事態の像とみなす初期ヴィトゲンシュタインの見方と親和的である。


  • 内的表象
    理解している内容,頭の中の関係把握
  • 外的表象
    その内容を外に出したもの
  • 三つ組
    外的表象化のための一つの形式


    初期ヴィトゲンシュタインは、命題を事態の像として捉えた。ここでいう像とは、見た目の類似ではなく、表象を構成する要素間の関係が、世界における対象間の関係に対応していることである。また、彼が言及する模型の例は、表象が単なる静的な記述ではなく、事態の可能なあり方を外的に示し、さらに操作可能なものでもあることを示している。

    この観点からみると、模型、三つ組、概念マップ、再構成型概念マップは、事態あるいは理解内容を外的表象化する方法として連続的に位置づけることができる。模型は、対象とその関係を空間的配置によって表す類比的表象である。これに対して三つ組は、対象―関係―対象という形式によって事態を記号的・命題的に表す表象であり、模型の空間的対応を論理的対応へと離散化したものとみなせる。さらに概念マップは、単一の事態ではなく、複数の概念間関係をネットワークとして表すことにより、理解内容の構造を外化する表象である。

    再構成型概念マップは、この外的表象をさらに操作可能なものとして設計した点に特徴がある。学習者は完成済みの表象を受け取るのではなく、与えられた部品を組み立て直すことによって、関係の妥当性や全体構造の整合性を吟味することになる。この過程は、ヴィトゲンシュタインの模型を「いじる」ことに対応し、表象上で可能な関係構造を試行しながら、事態あるいは理解内容のあり方を検討する営みとみなすことができる。したがって、再構成型概念マップは、命題を事態の像とみなす写像理論を、学習者による構成・再構成の過程へと拡張した教育的表象と位置づけることができる。

    模型、三つ組、概念マップ、再構成型概念マップは、いずれも対象や概念間の関係を外的に表しうる表象として捉えることができる。このような表象の成立を哲学的に考える際、命題を事態の像とみなす初期ヴィトゲンシュタインの見方は、一つの補助線となる。とくに再構成型概念マップは、表象を単に読む対象ではなく、操作し、組み替え、整合性を吟味する対象として設計しており、この点で模型操作の発想と親和的である。

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