概念マップの構造読解と再構成的読解が批判的理解に与える影響

タイトル

概念マップの構造読解と再構成的読解が批判的理解に与える影響

研究目的

概念マップに対する構造読解と再構成的読解という二つの読解様式を比較し,それらが学習者の批判的理解および意味構成過程に与える影響を明らかにすることを目的とする。

構造読解

構造とは,提示された概念マップを完成した外的表象として受け取り,その構造を変更することなく,そこに表現された概念および概念間関係をそのまま解釈する読解活動である。

再構成的読解

再構成的読解とは,提示された概念マップを操作可能な外的表象として扱い,概念や関係を再配置・再構成しながら意味を解釈する読解活動である。この過程では,概念間関係の妥当性や整合性の検討が伴う。

批判的理解

批判的理解とは,学習対象の内容をそのまま受け取るのではなく,概念間の関係の妥当性や整合性,不足や不整合を吟味し,必要に応じて再解釈や修正を行いながら形成される理解を指す。

仮説

構造読解が与えられた関係構造の解釈を中心とするのに対し,再構成的読解はその関係の妥当性の検討および再構築を伴うため,より批判的理解を促す読解様式であると位置づけられる。



ーーー
学習活動における認知的関与の深さは,ICAPフレームワーク(Chi & Wylie, 2014)においても示されており,情報を再構成する活動は単なる受動的理解よりも深い学習をもたらすとされている。また,概念マップは知識構造の外化手段として有効であることが指摘されており(Novak & Cañas, 2008; Nesbit & Adesope, 2006),その構成過程は生成的学習を促す(Wittrock, 1990)。一方で,批判的理解は情報の妥当性を評価する過程を含む理解として定義される(Ennis, 1985)。
しかし,これらの活動が学習課題においてどの程度必然的に生起するかは別の問題である。構造読解においては,学習者は提示された構造をそのまま解釈することが可能であり,構成や評価的処理は任意にとどまる。一方,再構成的読解においては,概念間関係を再配置・修正することが課題遂行の前提となるため,構成および評価的処理が不可避となる。
本研究では,これらの知見を踏まえ,概念マップの再構成がこのような評価的処理を内在化する可能性を検討する。
 Chi, M. T. H., & Wylie, R. (2014). The ICAP framework. Educational Psychologist.
Nesbit & Adesope (2006)
Novak & Cañas (2008)
Wittrock (1990)
Ennis (1985)
ーーー



1. 実験の基本構成
実験目的

概念マップに対する構造読解と再構成的読解という二つの読解様式を比較し,それらが学習者の批判的理解および意味構成過程に与える影響を明らかにする。

・独立変数
読解様式(2条件)
  構造読解条件
  再構成的読解条件

・従属変数
批判的理解
意味構成過程の指標


2. 条件設定
・条件1:構造読解条件
参加者は,教材本文+その内容を表した概念マップを提示される。
概念マップは完成形のまま提示し,参加者はそれを見ながら内容を理解する。
必要に応じて本文と概念マップを参照しながら読解するが,概念マップ自体は変更しない。

想定される認知活動
概念関係の解釈
本文との対応づけ
内容理解

ただし,構造の吟味や修正は任意。

・条件2:再構成的読解条件
参加者は,
教材本文
部品化された概念マップ
  概念ラベル
  リンクラベル
  あるいは部分構造
を提示される。
参加者は本文を参照しながら,それらを再配置・再構成して概念マップを完成させる。

想定される認知活動
概念関係の解釈
関係の妥当性判断
不整合の発見
再配置・修正

※こちらでは構成と評価が課題遂行上不可避。

3. 実験手順
手順案

Step 1. 事前測定
 対象内容に関する事前知識テスト
 必要なら読解力や概念マップ経験の確認

Step 2. 教材読解
両群とも同じ教材本文を読む。

Step 3. 概念マップ活動
構造読解群:完成した概念マップを参照しながら読解
再構成的読解群:部品化された概念マップを再構成しながら読解

Step 4. 活動中データの収集
疑問記述
活動ログ
マップ修正履歴

Step 5. 事後測定
批判的理解テスト
内容理解テスト
自己評価質問紙

Step 6. 遅延測定
数日後または1週間後に
保持
再説明
誤り検出
を測る

4. 測定指標
A. 批判的理解
 概念マップ中の不適切な関係を指摘させる
 本文と概念マップの不一致を見つけさせる
 不足している関係を補わせる
 関係の妥当性理由を説明させる
得点化観点
 不整合検出数
 修正提案の妥当性
 根拠説明の質

B. 意味構成過程
1. 疑問の生成
 活動中または活動後に
  疑問数
  疑問内容
  疑問のタイプ
 を収集する。

 概念意味の疑問
 関係の疑問
 構造全体の疑問
 本文との対応の疑問

2. 疑問の解消
各疑問について
 活動後に解消したか
 どのように解消したか
を記録する。

3. マップ修正
再構成群では特に,
 追加
 削除
 再配置
 リンク変更
を記録する。

構造読解群にも,活動後に「修正したい箇所」を書かせる.再構成的読解群も,活動後に「変更したい箇所」を書かせる.

C. 補助指標
 内容理解テスト
 認知負荷
 自己評価
 活動時間

5. 仮説
H1
再構成的読解群は,構造読解群よりも高い批判的理解を示す。

H2
再構成的読解群は,構造読解群よりも多くの疑問を生成する。

H3
再構成的読解群は,構造読解群よりも多くの疑問解消を示す。

H4
再構成的読解群では,概念間関係の修正や再配置が多く観察され,それが意味構成の痕跡(修正・変更)として現れる。

6. 実験デザインの型

(パターン1)2群間比較
Group A:構造読解
Group B:再構成的読解
  個人差が入るので事前知識を測る
  ランダム割り当て

(パターン2)同一参加者内比較
教材Aは構造読解,教材Bは再構成的読解のようにする。

利点
 個人差を抑えられる
注意
 順序効果が出る
 カウンターバランスが必要

7. 教材設計のポイント

教材は,
 一定の概念数
 明確な概念間関係
 ある程度の誤解可能性
が望ましい.

適した教材
科学概念説明文
歴史的因果説明
情報技術の仕組み説明

条件
 10〜15概念程度
 10前後の関係
 単純すぎないが過度に難しくない

8. 分析方法
量的分析
 批判的理解得点:t検定 or ANCOVA
 疑問数:t検定 or Mann-Whitney
 修正数:t検定 or Poisson系モデル

質的分析
 疑問内容の分類
 修正内容の分類
 誤り検出の質的特徴



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