生成AI時代の人の役割とは: 生成AIの「成果物」に何があって,何がないのか?
生成AIは高品質な「成果物」を迅速に生成できる。ここでいう成果物とは、質問応答、要約、説明文、解法手順、設計案など、一定の形式と整合性を備えた言語的出力である。トランスフォーマーに代表される計算機構は、入力系列に対してどのような演算を行い次トークンを生成するかという意味で計算的機序が明確であり、また文脈・例示・指示に応じて一貫した応答を返すという点で機能的機序(入出力の法則性)も説明可能である。したがって生成AIの成果物は、一定の条件下で「それらしく」「有用に」振る舞うことを、計算と機能の水準では記述できる。
しかし、成果物が「正しいと言える条件」—すなわち根拠の真正性、推論の妥当性、適用範囲の限定、反例耐性、矛盾の検出と修正—がどの内部過程によって保証されるかという意味的機序(妥当性保証)は、少なくともLLM単体では内在化が弱い。生成AIは説明や根拠らしき文章を生成できるが、その説明が実際の内部因果過程に忠実である保証(faithfulness)は一般に強くなく、また根拠が「検証可能な参照」として提示されない限り、説明は妥当性保証の代替とはならない。したがって、成果物の完成度や説明のもっともらしさは、意味理解の成立を直接には担保しない。
このとき教育的に重要なのは、生成AIが成果物生成を代替し得る状況においてこそ、学習者が意味的機序の部分—すなわち「なぜその主張が言えるのか」「どの条件で成り立ち、どの条件で崩れるのか」を根拠・例外・適用範囲として構成し、点検し、必要に応じて修正する過程—を担う必要があるという点である。言い換えれば、人の役割は成果物を生産することから、成果物の妥当性を成立させる意味構成(意味点検)へと重心を移すべきである。したがって学習設計は、生成AIの出力を起点として、根拠提示の検証、差分の同定、反例探索、適用範囲の限定と修正を外部化させる課題構造を組み込み、意味的機序を学習者側で作動させる方向へ再設計される必要がある。
さらに,このような意味点検を学習活動として具体化する方法として,本稿は再構成法を位置づける。再構成法とは,生成AIが提示した説明や学習者自身の暫定的理解を,概念マップ等の外的表象としていったん外在化し,その構造を部品化したうえで,学習者に再配置・再接続させることで,命題関係の成立条件を点検させる手続きである。再構成は,単に「同じものをもう一度作る」復元作業ではなく,(i) 命題の再決定を強制することにより曖昧な関係づけを露呈させ,(ii) 部品の過不足や行き詰まりを差分として顕在化させ,(iii) 別形式・制約下での再統合を通して適用範囲や例外条件の再検討を促す点で,意味点検を起動する装置として機能する。したがって再構成法は,「根拠は何か」「どの条件で成り立つか」「反例は何か」「どこをどう修正すべきか」という意味的機序の要素を,学習者の操作対象として外部化し,観察可能な学習過程として実装しうる具体的方法となる。具体的には,(1) AI出力または自己説明を命題集合として外在化し,(2) 欠落・誤接続・過剰一般化を差分として同定させ,(3) 根拠参照・例外条件・適用範囲の明示を伴って再構成させる,という最小手順として構成できる。
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